明日も歌う あなたのために


あれから花菜さんとは連絡はとってない。俺から聞いたのだから俺からするべきなんだろうとは思う。


だけど看護師ってすごく忙しそうだし、退院した患者にいつまでも付き纏われたら迷惑なんじゃないか、と考えてしまったらなかなか踏み出せなくて。


俺は退院してしまえばもう花菜さんの立場からしたら"入院患者"じゃない、ただの"高梨湊"だ。

だけど俺が何処に居ようと花菜さんは変わらず誰かの"看護師"なんだって気付いたら、やっぱり踏みとどまってしまって。


俺はおこがましくも、"高梨湊"と"佐原花菜"になれるんじゃないかなんて勘違いをしていたみたいだ。



────じゃあ俺は………"高梨湊"と"佐原花菜"になったとして、どうゆう関係になりたかったんだよ………。



考えれば考えるほど分からなくなるし、頬は熱くなるばかり。

恥ずかしさに耐えられなくなり、思わず顔を隠す様に机に突っ伏すと、後ろからなにやら誤解した龍が「ミナどうした大丈夫か!?」なんて叫ぶが、

横ではまだ佐原がニヤニヤと全てを見透かしたような笑みを浮かべて俺を見ている。








───他人に見透かされるほどダダ漏れだってのに……

まだ自分の気持ちに気づかないフリをしている俺は、

かなりの"ヘタレ"なんだろう………。
















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