仁と私のストーリー
1/365の確率…本音の裏側が本音…仁と私のストーリー⑥
仁と迎えた最初の春…。
何気に聞いた誕生日。私の耳がピクンと反応した。

「えっ?!マジで?!4月28日?…私も4月28日なんだけど…」

『うそやっ?!マジで?…』

お互いおどろいた…。
私はこんな偶然もあるんだとうれしかった。
けれど、同じ誕生日が逆に私を苦しめる事になるなんて思ってなかった。
私と仁の生活は相変わらずけんかの多い日々だった。
理由はその時によって違うけど、たどり着く内容はほぼ毎回変わらない。
なぜか理由からかけはなれて、行き着く口論の内容は毎度おんなじ。
仁はなぜ過去の話を引っ張り出してけんかのたびに引き出すのか?
私には理解できなかった。

「なんで過ぎたことを今になって言うの?」

『お前がそういう態度で言うからやないか』

「今の問題に何の関係性もないやん。挙げ足をとるかのように責めてこんといて」

『関係性は一緒やないか』

???

一緒?

違うことくらい分かってるんじゃないの?

なぜ同じ事にこだわるのか疑問だった。でもその理由が分かった。

仁のトラウマ…。

仁の過去を最初の頃に話してくれた事があった。
仁は今までに刑務所を7~8回程務めあげているから彼女との交際が長続きする事はほとんどなく、苦い経験の繰り返しで今がある。
仁は相手にいつも真剣なのに、彼女側は仁と交際するとメリットがあるらしく、そこそこの好きの感情で彼女のポジションにつき、嫌になれば去っていく彼女が多かった。
その目的は様々らしいけど、そんな出会いばかりで彼女達が語る気持ちや感情に疑いをもち、信用する事ができない。

本音の裏側が本音…。

難しいけど、これが仁の考え方。

「好きやから一緒におりたいんよ。だからこうやって喧嘩してても別れずここに戻ってきてるやん」
「なんでそんな事が分からんの?」

『好きならそんな態度はせぇへん。』『ただ今は他にええ人おらんし、俺ととりあえずおれば金はかからん』
『喰わしてくれるでおるだけで他にすきな人できたらそっちにいくつもりなんやろ』
『すいとるだけ吸いとるんやろ?違うか?』
『ホンマに俺の事好きなら俺を喰わせるだけの金を運んでくるのが女や』
『でもお前はそんな努力もせん。金あっても出さん。そんなんで好きやからって言われて信じれるか?』

喧嘩した時の仁の口癖…。

またトラウマからの仁義スタイル…。

私は頭の中でこの下りのタイトルを勝手につけため息をつく。

仁が言う事は分からないわけではないよ。
だって凌ぎが回らずしんどい時期に出会ったから、いろんな悩みを聞いてきたんやから。
だから、仕事がおわれば仁の家に向かいごはんやたばこ、時にはガソリン代も助けた時期があった。
そこからが交際のスタートなので仁は私がお金が目的じゃない事くらい分かってると思ってた。
だから風俗で働いて助けるからって言って仁の目の前で面接の予約もしたよね?
けれど、風俗の仕事はさすがに仁は割りきれなかったのか賛成しなかった。

『他の男に身体みせるのを考えるだけで気がおかしくなるわ。他に色々あるやないか?!』

「そやけど…あんたが言う喰わせろって時給ナンボの次元では到底おっつかへんで」
「組代やら色々諸々で仁が言うてる金額の一部にもならへん。そんなんでどうしろ?って言うの?」

そんなやり取りで話した事があった。
私は仁が言うことや、喧嘩して暴言を吐く言葉一つ一つを正面で受け入れてたので本音として理解してきた。

けれど仁は言う…。

『俺が喧嘩して吐く言葉には思ってない言葉でも言うてまうでな…』

それってひどくない??

『仕事でも金をようけ稼げって言ってるんじゃないよ』
『パートでもいい。金を稼ぐ姿勢が大事であって金の多さじゃない』

?????…

どういう事?
喧嘩の度に言われるお金の事…。
だったら喧嘩の時の暴言はどんな意味がこもってんの?
簡単に言うけど、私は真剣に聞いて真剣に答えて傷ついてる事を気づいてる?
仁はどんな思いでどんな事を考えているのか分からなくなった。
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