愛しの残念眼鏡王子
だけどその表情も時間が経てば、一瞬で崩れ去った。

「そっか。……よかった、安心した」

情けないほど、ふにゃっと笑顔にさせて――。


後頭部を掻きながら照れ臭そうに話す彼に、やっぱり私の胸はまたトクンと鳴ってしまう。


なぜかな?

彼の笑顔はまるで少年のように眩しくて、ちょっぴり可愛らしくて……。

一瞬にして視線を奪われてしまうんだ。


しばし専務の笑顔を眺めてしまっていると、専務はそのまま口を開いた。

「じゃあいつか香川さんがうちの飲み会に参加してくれることを、楽しみにしているよ」

「え」


理由を聞かないの? どうして私が飲み会に参加しないのかを。

それを聞きにきたんじゃないの? みんなに頼まれたんじゃないの?

なのに専務は「送るね」と言うと、先に歩き出してしまった。


そんな専務に私はついていくことしかできない。

「飲み会って言ってもね、俺の家で飲むだけなんだ。みんなでおつまみとか持ち寄って」
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