愛しの残念眼鏡王子
思い出すだけで泣きたくなるような……そんな存在の人がいたのだろうか?
今の私のように。


一瞬脳裏をかすめた面影に、胸を鷲掴みされたように苦しくなってしまう。

もうここに来て三ヶ月も経つのに、な。

どうして簡単には消えてくれないのだろうか。

思い出したくない過去ほど、記憶から消せないのはなぜだろう。


たまらず下を向き胸元をギュッと掴んでしまうと、なにを勘違いしたのか専務は慌て出した。

「ごっ、ごめんっ! 香川さんのことが分かるとか偉そうなこと言っちゃって! しかも俺ってばなに勝手に語っているんだろう。恥ずかしいな……」


今さらだというのに、専務は照れた様子でガシガシと頭を掻き出した。

おかげで元々くせっ毛の髪の毛が、ボサボサになってしまっている。

思わず手を伸ばして整えてあげたい衝動にかられた時、専務は耳を疑うような言葉を発した。


「もう図々しいの承知で言わせてもらってもいいかな?」

前置きすると、専務は目を細め微笑んだ。

「頼りないかもしれないけど、俺でよければいつでも頼ってね」
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