愛しの残念眼鏡王子
「ワンワンッ!」

まだ遊び足りないのか、ユウは遊んでと催促してくる。

そのおねだりの仕方がまた可愛くて、堪らず起き上がりユウとまた遊び始めた。

東京での辛い経験も、ここにいればいつか忘れられる気がする。

そう思えるのはきっと、専務がいるから――。



「松田さん、そろそろお茶の時間ですよね? 私、今ちょうど手が空いているので準備しちゃいますね」

十時十分前。
そろそろお茶の時間。


席を立ち給湯室で準備を進めていると、なぜか感じる視線。

そっと振り返ると、なぜか松田さんが給湯室を覗く形で私を見つめていた。

しかもニヤニヤしながら。


一旦お湯を沸かしていたガスの火を止め、松田さんの方を向いた。

「あの、なんでしょうか」

松田さんと一緒に働き始めて早半年も経てば、嫌でも理解出来てしまう。

彼女が今のようにニヤニヤしている時は、なにか企んでいるんだって。
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