愛しの残念眼鏡王子
先手を打つように声を掛けるけれど、松田さんはいまだにニヤニヤしたまま近づいてきた。

「いや~、最近の光希ちゃん、仕事中……とくに十時と十五時のお茶の時間になると、すごく嬉しそうだなって思って」

「……えっ」


素直な身体はギクリと反応してしまう。

松田さんはそれを見逃さなかった。

一気に私との距離を詰めてくると、興奮気味に言ってきた。


「ねぇ、ずっと聞きたくてウズウズしちゃっていたんだけど、光希ちゃんと専務、冗談じゃなくて本当に良い関係になったりしているの!? 最近、ふたりともどことなくぎこちないじゃない? でもふたりでいる時はいい雰囲気だし!!」

「えっ、いやその……」


専務とのことを言われてしまうと、嫌でも反応してしまう。

専務を好きって自覚して早三ヶ月。

私と専務の関係は、傍から見たらなんら変わりないと思う。

今も上司と部下の関係だし。

でも松田さんの言う通り、ちょっぴり変化はあったりする。
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