愛しの残念眼鏡王子
ふとした瞬間に、専務と目が合う回数が増えたし、そのたびに専務は私と同じように照れた反応を見せる。

話す時は少しだけぎこちないけど、専務はいつも笑いかけてくれて……。

仕事にやりがいを感じている。

けれどそれと同時に、会社に来て専務に会えるのが楽しみで仕方なかった。


十時と十五時。
専務にお茶を出して、そこで交わす何気ない一言が嬉しい。

私はもう完全に専務に恋している。


四年以上付き合った人に振られたばかりなのに、もう?って言われちゃいそうだけど、それほど専務は魅力的な人なんだ。


イケメン……ではないけれど、優しくて笑うと可愛くて。

仕事には一生懸命で、自然と人を惹きつける魅力を持っている人。

こんな人が近くにいたら、好きにならずにはいられないよ。


――なんてことを松田さんに話せるわけもなく、こうやって詰め寄られても、なんて答えたらいいのか戸惑ってしまうばかり。

困り果てていたその時だった。

「なにやっているんですか?」
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