愛しの残念眼鏡王子
いつもよりワントーン低い私の声に、専務の笑顔は消え失せた。

けれど一度出た想いは、止められそうにない。


「専務は小野寺さんの気持ち、なにも分かっていません。……私、小野寺さんとは会ったことないですけど、専務の話を聞いてすぐに分かりました。……小野寺さんが専務になにを伝えたかったのか」

「え……?」


分からないと言わんばかりに顔を顰める専務。


「専務は自分に自信がなさすぎです! だから小野寺さん言ってくれたんだと思います。専務は魅力的な人だから、そんな専務には必ず運命の人が現れるって。たったひとりのヒーローになれるって」


「香川さん……」


やだな、私ってばなにひとり熱くなっちゃっているんだろう。

でも伝えずにはいられない。


「専務の言う通り、今の専務を見たら小野寺さん、絶対がっかりしちゃいます! ヒーローになれるのになろうとはせず、いつまでもウジウジしているんですから!! 今のままの専務じゃ誰も好きになんて、なってくれません!」
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