つなぎたいから
あたしは特に気にすることもなく音楽を聞き始める。


エレベーターが1階に着きドアが開く。
降りようとした瞬間、右手を後ろに引っ張られた。
2、3歩後ずさる。
あたしはびっくりして、空いてる左手で片方のイヤホンを外した。


「ちょ…、なに…」

「高橋が無視するから」

「引っ張らないでよ。転びそうになった」


あたしは握られた右手をはなそうとした。
しかし、不破くんは握った手を緩める気配がない。


「はなして」

「なんで」

「誰かに見られたら…」

「誰もいないだろ、こんな時間」


エレベーターのドアが閉まりかけたため、開くのボタンを押した。
不破くんと並んでエレベーターを降りる。


「なんで手つなぐの」

「イヤ?」


ずるい。
質問に質問返し。
自信満々な表情。
あたしが断らないだろうって思ってるんだ。


「つなぎたいから」


不破くんがサラッと言った。
そんなこと言われたら、あたし、もう何も言い返せない。


くやしい。


でも。
うれしくて、ドキドキする。
あたしは不破くんの手をキュッと握り返した。
< 5 / 5 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:30

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

言わなきゃわからない?

総文字数/13,963

恋愛(オフィスラブ)29ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
取っつきにくくて。 ポーカーフェイス。 いつか、その表情をあたしが崩してみたい そう思った。 ※【会いたいとか、さみしいとか。】に出る 二人のおはなし。
やさしくない…

総文字数/1,383

恋愛(オフィスラブ)3ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
結局、 となりに誰かがいてくれたらそれでいい。
おみくじは当たらない

総文字数/3,836

恋愛(オフィスラブ)7ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
少しのノンフィクションをまぜた、アラサー女子のおはなし。 ※本編に出てくる『ドリンクバーの人』とは… 【オレのにちょっかい出さないでくれる】をご覧ください。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop