イジワルな彼とネガティブ彼女
せっかくの楽しい気分が台無しだ。


「翼くんごめんね、本田さんって感じ悪いっていうか、イラッとさせる人だよね」


「・・・なんかさ、本田さんがうらやましい」


「そうかな、どこが?」


翼くんの方がずっと優しいし、一緒にいて心地いいのに。


「だって、素の莉子さんの姿を、引き出してるような気がするから」


「それはちがうよ、私はイライラしてるだけだから。


そんな姿みせちゃって、恥ずかしい」


「俺にも、思ってることをストレートにぶつけてほしいのに」


そう言う翼くんの横顔は、どこかさみしそうだった。


「私にとっては、翼くんの方が、ずっとずっと・・・」


魅力的だよ、好きだよ、って続けようと思った。


だけど、こんなセリフ、私には似合わない。


私が言っちゃいけない言葉だ。


「楽しいよ」


かろうじて続けた言葉は、少し意味不明だったけど。


「あっ、このボールペンどうかな?」


その辺にあったのを、適当に指差してごまかした。









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