イジワルな彼とネガティブ彼女
本田さんは、意外と安全運転で。


流れてゆく車窓の風景をながめていると、日頃の疲れも一緒に吹き飛ばされてゆくみたいだ。


「俺、ここ走ってみたかったんだよな」


正面にみえてきたのは、翼くんと乗った観覧車から見た橋だった。


「すげーよな、海にこんな長い橋がかかってるんだもんな」


「そ、そうですね」


翼くんとの思い出に、本田さんが侵入してきたような気分になった。


でも、橋のイルミネーションがキレイで、まるで海の上を飛んでいるみたいで、みとれてしまった。


いやいや、翼くんという存在がいるのに、私は何やってんだ。


「橋を渡ったら、おろしてください」


「渡ったとこだと、おまえの家から遠いし、駅もないぞ。


ちゃんと送ってくから、安心しろ」


「すみません」


「なに謝ってんだよ、俺が誘ったんだし」


「いえ、私、勝手に誤解してたので謝ったんです」


「誤解って?」


「本田さん、お坊っちゃんかなにかで、親御さんに車を買ってもらったのか、大手はそんなにお給料いいのかって思ってたので」



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