狼陛下と仮初めの王妃
「ありがとう。マリア、これからよろしくお願いね」
「はいっ、王妃さま。精一杯お尽くしいたします!」
彼女は今日から王妃付きとなった人で、歳はリンダと同じだと報告書に記してあった。
「まあ、王妃さま。変わったアクセサリーをお持ちなんですね。古びてみえますが、すごく綺麗ですわー」
マリアがコレットの胸元を見て、目を輝かせた。
胸元に光るのは、宝石が埋め込まれた王の書庫の鍵。
陛下からいただいた大切なこれは、箱の中から持ち出すときは紐をつけて首にかけるようにしている。
「これは、陛下からいただいた、書庫の鍵なの。失くしてしまうと大変だから、こうしているの」
「そうなんですかー。そうしていると、アクセサリーみたいですわ」
マリアは余程気に入ったのか、コレットにお茶を出した後も鍵をじっと見つめていた。
その表情は、珍しい花や蝶を観察しているような真剣さもある。
あんまりそうしているので外して見せてあげたくなるが、これは宝剣同様に人に触らせてはいけない大事なもの。
コレットがほかの仕事に戻るように言葉をかけると、彼女はハッとして慌てて姿勢を正し、ワゴンを引いて辞して行った。
マリアは少し変わった人かもしれない。
ちょっと気になりつつも、コレットは手元の書物に目を戻した。