狼陛下と仮初めの王妃


「すごい綺麗だよ、コレット。幸せにおなり」


アリスが感慨深げに目を細め、コレットを抱きしめる。


「ありがとう、アリスおばさま」


アリスが手を引いてコレットを家の外に連れて行くと、外にいた男性陣からどよめきが起こった。


「まさか、コレットが王妃さまになるなんてなあ……。びっくりだ。きっと天にいるふたりも喜んでいるよ。本当におめでとう」


ニックは涙を拭くと、アリスからバトンタッチしてコレットの手を取った。

騎士たちが並んで作った即席のバージンロードを歩き、陛下の元へと連れて行く。


「コレットを、よろしく頼みます」


ニックは陛下にコレットを託し、後ろに下がった。

牧師の代わりをするのはアーシュレイ。

誓いの言葉を述べた後、陛下はコレットのヴェールをあげた。

その瞳がふわりと柔らかくなる。


「……二度目だな。だが、誓いのキスは初めてだ」


コレットは無言のままそっと瞳を閉じた。

森の中の小屋で夢見たキスが、本当になる。

指先で顎を支えられ、陛下の息が唇にかかるのを感じ、コレットの胸が高鳴る。

そっと合わせられた唇はとても柔らかく、コレットの想像以上だった。


「ん……」


コレットの手がぴくんと動いて、陛下の服を掴んだ。

唇を割って入ってきた陛下の舌が、口中を優しく這っている。

陛下としては、我慢に我慢を重ねて来たコレットへのキスだ。

自然と熱が入ってしまう。

その長~い誓いのキスに辟易したアーシュレイが、コホンと咳払いをした。


「陛下。いい加減にしてください。その続きは、夜に、お願いいたします」


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