狼陛下と仮初めの王妃


真摯な紫の瞳が、まっすぐにコレットを見つめている。


「君こそ、私が求めている“王妃に相応しき者”だ。コレット・ミリガン。私の真の妃になってくれないか」

「え……でもあの、わたしでいいのですか?」

「私は、君を愛している」


コレットは陛下の瞳を見つめた。

彼の瞳の中心にはコレットしか映っておらず、それが心底うれしくなる。

これからもずっと、彼の瞳の中心でありたいと願う。


「コレット・ミリガン。私とともに生きてくれるか?」

「はい、サヴァルさま。わたしも、あなたを愛しています。わたしを導いてくれますか?」

「それは、もちろんだ」


陛下が立ち上がるのと同時に、牛小屋の入り口から歓声と拍手が沸き起こった。

振り返ったコレットの瞳に、ニッと笑うアーシュレイとにこにこ笑顔のリンダ、それにうれしそうな騎士団の皆と、びっくり顔のニック夫妻が映った。

わっと、皆が牛小屋の中に入って来て、ふたりは囲まれてしまった。


「……聞いていたのか」


照れたようにボソッと呟く陛下の腕の中から、リンダはコレットを浚った。


「さ、コレットさま。準備を致しましょうか」

「え……なんの?」

「もちろん、結婚式の準備ですわ!アリスさま、お手伝いいただけますか?」

「え、ええ。もちろんだよ!」


リンダに声をかけられたアリスは、戸惑いながらも快諾して家の中へと誘う。

リンダの持っていた鞄の中から、白いドレスとヴェールが取り出され、ふたりの手によってあっという間に花嫁が仕上がった。

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