待ち人来たらずは恋のきざし
・否、断定は危険というもの

ほぼ毎年の事だ。
いつものように、今年も初詣でに出掛けた。その時引いたおみくじの事だ。
初詣に出向くのは、どこかの有名処の神社ではない。
地元の神社だ。

何度も訪れてはいるが、参拝の仕方を気にするようになったのはいつ頃からだろう。
参道に入る前から、きちんとした作法で出来るようになったのは、そう遠い昔の事ではないと思う。
それだけずっと曖昧でいい加減だったんだ。
案外と出来ているようで出来てないものだと実感した。
大人としてとか、年齢的にとか…女性としてだとか言われたら。
一般的に出来て当たり前だと思われる常識は、知らないままだという事を痛いくらい感じたものだ。
…この年齢ですから。
おみくじを引いても、何より気にするのは、大吉だろうか、凶じゃないだろうかと、そればかりを気にしていたところがあった。
そして良いと思われるものは持ち帰り、良くないとするものは、境内の木の枝に結ぶものだと思っていた。
いつとも知れず誰かが結んであるのを見て、そうする事が正しい事なんだと思っていた。
地域や神社にもよるのだろうが、どんなおみくじも持ち帰るもの、そう知ったのは何がきっかけだっただろう。


参拝を済ませ、今年も社務所でおみくじを引いた。
物凄く年代を感じさせる箱だ。自動販売と言うには不釣り合いにさえ見える代物だ。…失礼かな。箱の後ろに人が居て、投入されたお金を確認して出してるって言われても不思議ではないくらいだ。

投入口からお金を入れた。
コト。するかしないか程度の軽い音がして、おみくじが出て来た。

…今年こそは。少し…いや、かなりの期待を込め、開いて見た。
…凶。…。お゙…ぉ…ぉぅ…。はぁぁ。

ま、…。災い転じて福と成す、よ。

ここが底辺なんだから、あとは良くなる一方だととれば良いんだ。
凶は決して悪いと捉えなくていいそうだ。

えー…、待ち人は…。
おとづれなくくる。…?
これは調べてみないとよく解らない。
昨年は、来ず、さわりあり。だった。
これは、何らかの事情があって来ない、という事だった。
待ち人にどんな事情があったかは知らないが、文字通り、年末まで私の元に現れる事は無かった…。

今年の、おとづれなくくる、の解釈は、前ぶれなく突然やってくる、だった。
…ほぅ、何だか…、いいかもよ…今年はやってくるらしい。
もしかして、これは…、やっと訪れた何年に一度の好機…、吉兆かも知れない。…待ってたのよ。
今年はその待ち人が来る!?

…あれ?取り出し口にもう一つおみくじが。
前の人の取り忘れで、ずっと残っていたとか。
でも、出て来なかったら覗いて見るよね普通。
…二つ出たって事かな。古いおみくじ箱だから誤作動したのかも知れない。
じゃあ、これは、私のおみくじ、…二つの運命?
これも私の元に来る運命だったおみくじだと思おう。

手に取って開いて見た。

あ、吉…。
待ち人は、来たらず。…ん゛。
…これってどうなの。
私は一体どっちなんでしょう、神様。

結局、開けてしまった事だし、どちらも持って帰って来た。
願わくは、私的には、凶でも、最初の方がいいかな…。
それを切に願います。

今年はこっちにします。
< 19 / 110 >

この作品をシェア

pagetop