見えない僕と彼女の気持ち
訪ねてきた祖父母が異常事態に気が付いたから。

僕は慌てて病院に連れて行かれ、そしていろいろな検査などを経て、最終的に愛情欠乏性透過症という病名をつけられた。
愛情を感じられなくなると自分は必要とされてないと思い込み、いらない人間なら消えてしまいたいという心理が働き、そして文字通り“消えて”しまう病気。

原因がわかってから、祖父母たちは僕に愛情を注いでくれた。
母も正気に戻り、僕を愛してくれた。

僕の身体は少しずつ色を取り戻し、父が死んで三ヶ月もたつと元通りになっていた。

 
それからは完全に透明になることもなく過ごしている。
たまに失恋して色が薄くなることもあったが、消えてしまう事態にまでなったことはない。

母はあれからずっと、僕に過剰なくらいの愛情を注いでくれている。
たまに鬱陶しいと思うこともあるが、僕のためにしてくれていることなので、苦笑いですませている。

 
そんなこんなで二十八になった夏。

……僕は再び、完全に透明になってしまった。
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