秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「お返事を書きます」
「はい。あ、それと、ギュンター様から聞いてくるようにと言われたのですが、コルネリア様は刺繍はお得意ですか?」
「刺繍? ええ。苦手ではありませんが」
「かしこまりました。伝えておきます」
なんの質問? と首をかしげていると、にわかに、玄関口が騒がしくなってきた。
「ベルンシュタイン伯爵の伝令が来たと?」
扉を開けて入ってきたのはベレ伯爵だ。黒に近い茶髪を振り乱し、貴族にしては軽装の白シャツに赤いベスト姿だ。その下に逞しい肉体があるのは、見ただけでもわかる。結婚の遅かったベレ伯爵は現在四十七歳だが、体を動かすのが好きなためか年齢よりは若々しく見える。
コルネリアは立ち上がって父親を招き入れ、ルッツはひざまずき、伯爵に対して礼を尽くした。
「わが主より、縁談の返事を預かってまいりました」
「うむ」
ベレ伯爵は大きな体躯で顔もいかつい。真顔でいるといつも怒っているように見えるのだ。その伯爵の顔が、文面を読み進めるにつれ、柔らかみを帯びてくる。
「おお、そうか。喜べ、コルネリア。ギュンター殿はお前を妻に迎えたいと申してくださっている」
「はい」
「なんだ、驚かないな。知っていたのか?」
「昨晩、クラウス様主催の仮面舞踏会でお会いしましたの。そこで……」