秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~


 その夜、コルネリアは湯上り後のギュンターをバルコニーへと誘った。
ルッツは「先に部屋に戻っておりますね」と珍しく率先して気を利かせ、今はふたりきりだ。

コルネリアは、締め付けの緩い水色のドレスを着ている。首と腕を覆うように薄布を巻いているのは、肌荒れ対策だ。

まだ体を火照らせているギュンターはシャツも腕まくりしていて、いつもとは違い野性的にみえる。

ドキドキする心を隠しつつ、コルネリアは彼を見上げた。


「あなたに見せたいものがあるの」

「なんだい?」

「今日は月がきれいでよかった。あれよ、見て」


コルネリアの指さす先は海だ。

夜の闇に沈む海の表面に、もう一つの月がある。水面に移った月は、波の動きに合わせて形を変えながら、海の奥へあたたかな光を送っていた。


「私が一番好きな景色なの。灼熱の太陽よりも、月明かりのほうが優しくて好きなんです」


そう言えば、ギュンターは穏やかに微笑む。


「それは一番の褒め言葉だな」


どこをどう受け取れば褒め言葉になるのかはわからなかったが、それを尋ねることはできなかった。
問いかけた唇は、ギュンターによって優しく塞がれたからだ。

月明かりが、一足早く二人を祝福してくれたようだった。


【Fin.】


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