秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
「そんなの単純さ。今、令嬢たちはお前を射止めるためにいわば戦いを繰り広げているんだぜ? コルネリア嬢の行動を思い出してみろ。エリーゼの豪華な服を奪い、さりげなさを装ってお前とダンスを踊り、途中で逃げてお前の気を引く。まんまと彼女の思うつぼじゃないか。お前、あの後誰と踊ってもつまらないような顔をしていたじゃないか」
「そんな顔はしていない。仮面をしているのに見えるのかお前は」
「長い付き合いだ。ため息の多さでわかるよ」
「……まあいい」
確かに、クラウスの言っていることには筋が通っている。
「しかしそれは、俺の正体がばれていた場合の話だろう? 彼女と踊ったときは仮面をつけていた。どうして俺がギュンターだとわかるんだ。それに、こうして正体を明かすまで、俺は彼女はエリーゼ嬢だと思っていたくらいだ」
「自分の正体は最後に明かす気だったんだろう。それに、お前かどうかわからなくても、いい家柄の男だということは服装から分かる。玉の輿に乗れるんなら誰でもよかったのかもしれないじゃないか」
言い返す言葉が思いつかなかった。確かに、コルネリアには怪しいと思える部分がある。
しかし、ギュンターは「違う」と否定する心の声もまた無視できずにいた。
余裕のクラウスの顔を、握りつぶしてやりたい気分になりながら、ギュンターはもう聞いているのも嫌だとばかりに仮面をクラウスに押し付け、自分は扉のほうへと歩き出した。
「どこへ行く。ギュンター」
「うるさい。外だ。確かめてみなければわからないだろう」
扉を閉める直前に、クラウスの楽しそうな笑い声が聞こえて、ギュンターの機嫌は、ますます損ねられた。