難あり編集者と極上に甘い結末

「そんなくだらない提案ならしてくださらなくていいです。大体、私は貴方みたいな人絶対に好きにならないですし、自分の作品を伸ばす為にプライドも心も捨てられません。自分の力で自分の才能も作品も伸ばしてみせます」

 私の一言に、岩崎さんは少しだけ目を見開いた。すると、くすっと小さな笑い声を零して「そっか」と言う。

「はい。貴方の手で売れたくなんかないですから」

「ああ、そう。でも沼川さん、そんな強気な事言ってるけど、本当は俺のことを好きになっちゃうのが怖いだけなんじゃない?」

 恋愛するのを、怖がってるんじゃないの? と、彼が私に問いかける。

 彼の言葉に、私はぎくりとした。彼を好きになることは絶対に無いと確信している。だけど、恋愛をするのが怖いのは、確かにそうかもしれないと思ったのだ。

「違います」

 本当に鋭いところばかりを突いてくる彼に微量の苦手意識を覚えながら、私は力強く否定する。

「まあ、いいよ。どっちでも。君の答えがどうだろうと、俺は君の担当だから、やるべき事をやるだけだからね」

 改めてよろしく、と言って笑う彼。その笑顔の奥では、一体どんなことを考えているのか。

 仕事はできるが、少々難ありの担当編集者と私。そんな彼と、私はこの先うまくやっていけるだろうか───。


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