離婚前提策略婚。【改訂版】

龍成への罠

次の日、何事もなかったかのように専用車が迎えに来る。

俺もいつも通り会社に行く支度をする。


「行ってきます」


エントランスで華乃と別れ、車に乗り会社に向かう。


昨日の今日で麻友ちゃんはどんな態度をとるだろう。

俺はどうする?

詫びる気持ちなんて一切ない。でも麻友ちゃんとの仲が悪くなったところで、得することもなにもない。

麻友ちゃんから謝ってくればベストなんだけどな…。


考えながら頬杖をつくと、指に違和感を覚える。


─指輪なんて今までつけたことがなかった。

特に興味がなかったのが一番。つけたところで邪魔としか思えないのが二番。そして、女の為に何かを身に付けるのが嫌だったのが三番。


これまで何度女にプレゼントされてつけろとせがまれても、絶対につけなかった。

俺の人生の中でこれっきりだろうな。しかも左手の薬指なんて、一生つけることがないと思っていた。

この違和感がなくなることはあるのだろうか。


……んなことあるわけねぇか。
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