その唇で甘いキスをして…
海へ

昔住んでいた家は管理する人がいて
前と変わらず綺麗なままだった。

ジョウはあまり記憶がないようで
色々見て回っていた。

アタシが結婚する前に
ケイタと隣同士で住んでいた部屋や

ハルさんと二人で飲んだダイニングや

新婚時代を過ごした寝室が懐かしかった。

カオルも懐かしそうに部屋を見ていた。

昔はよく遊びに来てくれてたから。

アタシが与えられた部屋は壁紙は変わってたけど
同じ匂いがした。

アタシはこの部屋から仕事に向かい、
ハルさんに内緒でジョウさんと付き合って
あのベッドでジョウさんと寝た。

そしてケイタと恋に落ちてハルさんにバレないように二人の部屋を行き来して
結局ケイタに振られてこの部屋で泣いた。

そんなことは今となってはみんないい思い出になった。

ジョウが眠った後
ハルさんとカオルが飲んでいたダイニングに行った。

「懐かしいな?」

「うん。」

「お前…今何やってんだ?」

「まぁ、適当に食べていけるくらいの仕事はあります。」

カオルは後ろめたい時アタシの顔を見ない。

仕事の話をする時、カオルはアタシを見なかった。

きっと生活のためにまた女の人を手玉に取ってお金を稼いでるんだろう。

「いい加減戻って来たらどうだ?」

ハルさんはカオルが戻って来るのを本当に望んでるんだろうか?

「…じきに戻りますよ。」

「ジュンと逢うなとは言わねぇから。」

「自信あるんですね?」

「あぁ。な、ジュン?」

「え?…あ、うん。

帰ってきて。」

カオルはアタシの返事に不満そうな顔をした。

「ほんとに帰って来てほしいって思ってます?」

ハルさんは少し考えて答えた。

「いや、本当はまたお前に今の生活を乱されたくないと思ってたりもしてる。」

「乱しませんよ。

ハルキさんはジュンを大切にしてるみたいだし…」

カオルはどこか前と変わってる気がした。

そしてハルさんもカオルに嫉妬していた頃とは変わっていた。








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