その唇で甘いキスをして…
離れるココロ
カオルが後ろから抱きしめてるアタシに触れようと振り向いた時、

「ジュン、帰るぞ。」

とハルさんが後ろから声をかけた。

アタシがビックリして振り向くと怖い顔をしたハルさんが立っていた。

「ハルキさん、違うよ。

勘違いしないで。

ジュンは悪くない。

俺が抱きしめてくれなきゃ友達じゃないって言ったんだ。

だから…」

「わかってる。」

全然わかってない顔でハルさんはアタシをカオルから引き離した。

「ハルさん…」

アタシはその名前を呼んだけど
ハルさんはアタシの手を強く握ったまま
助手席に座らせる。

ハルさんは運転手さんに

「ここからタクシーで帰ってくれるか?」

とお金を渡して帰らせると運転席に座った。

「ハルさん、本当に違うの。

今日のはそんなのじゃない。」

アタシがそう言うと

「黙ってろ!」

とハルさんが強い声でアタシの言い訳を制した。

ハルさんは一言も喋らないで家に戻ると
アタシの手を引いて寝室に入る。

「お前は俺を何だと思ってる?」

「ハルさんはアタシの一番大切な人だよ。」

「だったらカオルにあんなことしないだろ?」

「どうして?前はあんなことしょっちゅうしてたよ。」

「今はもう状況が違うだろ?

お前は俺を一度とはいえ裏切ったんだ。」

アタシは何も言えなくなった。

ハルさんはそのまま部屋を出て朝まで戻らなかった。
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