恋デート 【絶対にキスをする】
観覧車って、なんか恋に似てる。

【観覧車デート】



「ねー、凌空(りく)。景色きれいだよ」

「………っスね」


ゴンドラに乗り込んで数分。今日ふたりでめぐった遊園地がだんだんとちいさくなっていく。

三連休の初日、今日は天気がよくて家族連れやカップルで園内はごったがえしていたけど、この狭い密室ではようやくあたしと凌空はふたりきりだ。

なのに凌空ははしゃぐこともなく、さっきからまるで知らない男になってしまったかのように黙り込んでいる。


「どしたの?高いとこ嫌いだった?」

「べつに。大丈夫っスけど」


凌空から返ってくる言葉はそっけない。あたしの向かい合わせに座って、固い表情のまま外の景色に視線を向けている。


いつもの明るくてちょっとチャラいキャラがどっか遠くに行っている。最近あたしといるときの凌空はずっとこんなカンジで、今日のデートも全然盛り上がらなかった。


年上なんだし、あたしがもっとがんばって話題振ったりすればよかったのかもしれない。

たとえば去年の秋に開幕したばっかのプロバスケリーグのこととか、映画の主題歌になったバンドの曲とか、たっちー先生の愛妻弁当盗難事件とか。

凌空が飛びつきそうな話題はいくつも思い付くのに、それでもあたしはだんまりを決め込んでいた。だって彼氏とのデートではしゃぐなんて、あたしのキャラじゃない。


クールって言えば聞こえがいいけど、あたしは愛想笑いが苦手で、「美咲先輩って冷たそう」って言われて部員にも同じマネの女の子たちからもちょっと怖がられてる。

だからイメージ的に、くだらない話題を振って盛り上げようとがんばるとか、あたしはそういうの求められるタイプじゃないだろうって思う。


でも「クール」とか「オトナっぽい」ってスタンスを付き通し過ぎて、今こんなに気まずくなってるのかもしれない。そもそも凌空って、あたしといて楽しいのかな。



凌空が好きだと言ってくれたあたしって、どんなあたしだったんだろう?






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