クールな御曹司にさらわれました
焼き鳥屋さんでランチを終えると、サラさんは会社に戻っていった。あとで加茂さんと迎えに来る旨を付け加えて。

「あれ、午後半休かと思った」

小森が言うけれど、婚約者の帰国で午後半休もらうのも恥ずかしいじゃない。

「定時後で間に合うよ」

「会うの半年ぶりだろ?今夜盛り上がっちゃうから、明日こそ有休もらっとけば」

小森が意味ありげに笑って言うので、私は意趣返しにとっても素直に答えた。

「悪いけど、私と尊さん、まだそういう関係じゃないから」

ふふんとちょっとドヤ顔で言ってみましたが、小森が目を剥いているじゃないか。

「え!!??マジで!!??いい年した成人男子と成人女子が遠距離とはいえ、お付き合い半年で何もしてないの?御曹司出国までにチャンスあったよな?結婚まで貞操を守るタイプ!?羽前家のしきたり?なんかいっそ怖いんだけど!!」

小森の声がでかいのと話の内容がアレなので、とりあえずチョップ。
うるっさい、余計なお世話じゃい。

だって、一度そういうことをしちゃったら離れがたくなるって、私も尊さんもわかってたんだもん。
あとは、正直な話、ずーっと漫才のように尊さんがボケて私が突っ込んでという関係性を維持してきた私たちがいきなり恋人同士って……イメージわかないのよ~。だから、焦らず一回距離を置けたのはよかったかも。

「いーの!私たちのペースで進めるから!」

「出会いもなれそめも、しっちゃかめっちゃかなおふたりにしては、真面目で堅実でいいんじゃない」

小森が心底おかしそうに言うのが、ちょっと腹がたつけれど、まあ概ねその通りではあると思います。
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