クールな御曹司にさらわれました
午後の勤務は至極真面目にこなしたつもり。
しかし、気持ちはうきうきと弾んでいた。本当は会う前に、可愛い服に着替えてヘアメイクしてなんかすればいいんだろうけどさ。キャラじゃないからなにもしない!

定時後迎えにきた加茂さんに「真中様は、相変わらず自然体ですな」なんて褒め言葉とも皮肉ともつかない言葉をいただきつつ、成田空港へ向かう。

「もうじき会えるわね」

サラさんが横からいたずらっぽく声をかけてくる。
空港で恋人を待つなんて初めての経験だ。尊さんが帰ってくる。やっと会える。

やがて、税関をくぐり搭乗客が姿を現し始めた。
どこだろう。背の高い彼を探す。きっといつもどおりクールでハイクラスなオーラをまとって、いかにも大物ですって雰囲気で現れるに違いない。

尊さん、私、この半年待ってたよ。
まだ、あなたのことは世界が違うように感じてしまうこともある。大企業の総帥夫人なんか務まる自信はない。

でも、尊さんが私を望んでくれるなら相応しい人間になろうと思うよ。尊さんのために努力できる。

早く顔が見たい。
声を聞きたい。

会えなかった間の話をたくさんしたいよ。一緒にごはん食べながら。
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