クールな御曹司にさらわれました
「壊すな」

背後から聞こえた声にぎくりと肩を震わせてしまう。振り向くとそこには先ほどの悪辣誘拐犯。
ええい、こんなところに閉じ込められて黙ってられるか!勇気なんて出すところで出さなきゃ、一生出す機会ない!
私は窓から離れつかつかと悪漢のもとへ歩み寄る。

「いったいなんなんですか!!どうして、私さらわれてるんですか!?」

いきなり会社帰りに拉致られて、妙なお屋敷に連れ込まれて逃げ場なしとか!
年頃の女子には悪い想像しかできないっつうの!

「真中妙、25歳。東京生まれ。H大学文学部卒。現在は複合機リース会社ヤマダアソシエーション勤務。恋人無し」

背の高い冷たい悪魔がつらつらと私の個人情報を並べ立てる。
えええ?怖いよ、この人めっちゃ怖い。何も見ずにしゃべってるってことは、私の個人情報が頭にがっちり入ってるってことでしょ?もしやストーカーさんでしょうか。

近寄っておいて、一転ドン引いてざざーっと下がった私に、冷淡悪魔は言った。

「言っておくがストーカーではない」

「じゃあ、なんで私なんかをさらうんですか……」

「理由は順を追って話してやろう。俺は親切だからな」

大真面目に言ってますが、親切な人間は誘拐なんて犯罪は起こさないんですよー。わかってます?それともやや天然気味ですか?
なんでもいいから、私を帰してっ!!
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