クールな御曹司にさらわれました
「名乗り忘れたが、俺は羽前尊(うぜんたける)。一応、会社経営者だ。名刺くらいはくれてやろう」

人差し指と中指で挟んだ名刺をびっと差し出してくるキザな仕草。とりあえず、相手が身元を名乗ってくれてるんだし……と受け取る。

『レオネットセキュリティ株式会社 代表取締役社長 羽前尊』

その肩書きは社長。わ、本当みたいだ。
なんだか納得と安心。こんなセレブな邸宅に連れ込まれた時点で、危ない筋の人かと心配してたんだけど、本物のお金持ちの方ね。

それにしたって、結構若いよね。この人。髪の毛はぴちっと撫でつけられているし、眉間に皺が寄りまくってるからはっきりしたことは言えないけれど、たぶん30歳前後って感じ?
私がひとりで頷いていると、羽前尊という社長が低く続ける。

「俺は今、グループ内で起こった横領事件の首謀者を探している」

「横領?グループ?」

「おまえが今いるのは、レオマーケットグループ総帥、羽前二郎の邸宅だ。グループ企業内で一億円の横領事件が発生してな。羽前二郎の実子である俺が犯人の確保と一億円の返金交渉に動いている」

私は息を飲んだ。レオマーケットグループ。それは国内大手のスーパーマーケットチェーンだ。
多機能な百貨店型の店舗ではなく、あくまでスーパーマーケットとしての質にこだわり、業績を伸ばした企業だったはず。
さらに、別軸でネット宅配やお弁当事業、レストラン経営など手広く行い、近年では物流事業に乗り出し成功している。なんで、そんなことを私が知っているかっていうと、うちの会社もレオマーケットグループの何社かに複合機をリースしてるんだよね。
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