ダンディ・ダーリン「完璧な紳士に惑い、恋焦がれて」

同じような仕草で、付け合せを口にしながら、

「……息子は、経理部に彼女がいて、今は婚約中なんだ」

蓮見会長が切り出して、

「……何を急に話してるんですか?」

と、顔をわずかに赤らめるのに、

「……さっきの、お返しだ」

と、会長が軽く微笑む。


「……お返しって、何子供みたいなことを言って…」

先ほど見せられたのとそっくりな表情で、眉を寄せて、

「……こんな父ですが、これからも世話してやってくださいね」

言うのに、

「……なんだよ、その言い方は……」

と、今度はまた会長の方が顔を赤くして、

「……あなたの負けですから。どうか、しっかりしてくださいね」

息子さんがククッと小さく笑う。

「……おまえに言われなくてもだな…」

「…ええ、わかってます。だから、きちんとけじめを…」

クスクスと笑ったままでいる息子さんと、なぜだか顔を赤らめたまま視線をそらす会長とを、交互に見比べながら、全く話の中身がわからないんだけど……と、首を傾げた。



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