赤に染まる指先
あなたが通り過ぎたのを確認してから、私はようやく息をした。

まるで眩暈がするようで、頭がガンガンする。

マラソンの後みたいに喉の奥が痛い。

だけどそれよりずっと、心臓が、心が痛い。


…痛いよ。


崩れ落ちる様にうずくまる。


…動けないよ。


動きたくないよ。


やだよ、もうやだ。


子どもみたいに全部を投げ出したくなる。


ねえ、苦しいよ。


苦しいの。


溢れるくらいの想いが、あなたへの想いが胸をいっぱいにして苦しいの。


ねえもう、助けてよ。


助けてよ…。



「なにしてんの」


顔をあげるとそこにいたのは吉田だった。

< 15 / 19 >

この作品をシェア

pagetop