赤に染まる指先
指先に、キスを
「あんたこそ、なにしてんの」

驚きのあまり反応が少し遅れてしまった。


「こんなところでうずくまって、体調悪いの?」


吉田は私の質問には答えずにしゃがみこんで私と視線を合わせた。


「体調は、大丈夫」


多分、と付け加えると吉田は「たぶんってなに」とふっと笑った。


「何笑ってんの」


むっとして答えると吉田は急に優しい顔をした。


「良かった」


吉田は謎だ。

いつも仏頂面するくせに、訳の分からないところで優しい顔をする。

何を考えてるんだ、こいつ。


「何の用」


私はそっぽを向きながら尋ねた。


「可愛い気がないね」


「うるさいな」


吉田は溜息を吐いて私から視線をそらした。

そして一言だけ呟いた。


「似てるんだよ」


その声は苦しそうだった。
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