ifの奇跡
治療も順調に進み、一応の治療過程も終了し退院する事が出来た。

実家での2人きりの生活が始まって1ヶ月近くが経った頃、免疫力が下がっていたせいで体調を崩した母が再入院をした。


そんなある日の夜、主治医の先生と話した母の体の状況や退院の話などを姉に伝えようと電話をかけた。


「それで…もうすぐ退院できそうなんだよね。今週の検査の結果次第で伸びる可能性もあるんだけど多分大丈夫だろうって。」

『そっか…お母さんの事いつもお願いしてばっかりでごめんね。莉子もありがとう。結局私が今こんな状態だから…あんた1人に任せることになって悪いとは思ってるんだけど、もう少し近かったらなって思うよ、いつも……」


お姉ちゃんは、私と話すと決まって私に謝ってくる。

長女なのに、何もしてあげられない現実にもどかしさを感じているのだと思う。


「お姉ちゃんはそんなこと気にしなくていいんだから…。今は自分の体とお腹の赤ちゃんの事を大事にしなきゃ。もうお腹もだいぶ大きくなってきたんじゃないの?」

『…うん、ありがとね。赤ちゃんは順調に育ってくれてるみたいだから、お母さんに初孫の顔を見せられるように後少し頑張らなきゃね。』

「そうだね。私も母さんも早く赤ちゃんに会えるの楽しみにしてるよ。予定日7月末だったよね?」

『うん、本当に妊娠が分かったあの時からあっという間だったよ。』


姉の妊娠が発覚したのは、ちょうど姉が母の様子を見に帰省してきた時で生理が1週間遅れて気づいたと言っていた。

そんな話をしていたら、ふと…頭の中で何か違和感のようなものを感じ、心の中でザワザワと嫌な音がなりだした…。


あれ?…そう言えば…私しばらくアレ使ってない……よね?

最後に使ったのいつだった?

その違和感の正体にたどり着いた瞬間…体の血の気が一気にサーーッと引いていく。

貧血のように目の前が真っ暗になり倒れそうになった。
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