諦めて恋だと気づく



 流行りをあまり気にしなさそうな人が、私が気になるタイプだ。だが、そういう人のことが気になるといえば、大体変わっているねぇ、と言われてしまうことに気づいた私は、気になる人が出来ても友人に滅多に言わなくなった。からかわれるのも避けたかったのだ。

 好きな人ができたらいいたくなる、と友人は言っていたが、そんなことはない。

 私は、ひっそり自分だけであたためておきたかった。 
 これは、恋なのだろうか。

 

「恋だね、恋」



 教室で男子がペンを持ってふざけている中で、美紗がいう。



「違うと思うんだけど」
「えー、何でよ。目で追いかけてしまう、だなんて定番の定番でしょーに」
「えー」
「えー、じゃありません。ずばり恋だね。我輩はそう見た」
「どこの教授なのよそれ」



 一番親しい美紗に話すと、恋だねという。だが「納得してない顔だ」と言われる通り、納得していない。



「だって」



 私は教科書を出しながら、あの学ランを思い出す。本を見ていたり、音楽を聞きながら目を閉じている、あの顔と姿。



「好きかどうかわからないもん」



 ―――美紗の「何ですと」という顔が面白かった。


< 3 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop