不思議な眼鏡くん
日当たりがよくて、この部屋にした。ほわっと暖かな空気が漂う。日中に差し込む日差しのおかげだ。
1LDKの部屋。小さなリビングには、二人がけのソファとグリーンのラグ、テレビ。引き戸を開けると続きになる寝室には、シングルベッドが置いてあった。
咲は部屋に入って暖色の電気をつけると、カーテンを閉める。
「どうぞ」
咲が言うと、響は無言で部屋に入ってきた。対面式キッチンの床に買い物袋を置く。ガサッと音がして、ビニールの中から缶詰が落っこちた。
咲はしゃがんで拾おうと手を伸ばしたが、響が先に拾い上げた。
「ありがとう」
咲は、缶詰を受け取りながら、無言を貫く響に言う。
「ねえ」
ぽつんと、響がつぶやいた。
缶詰をキッチンに置きながら、咲は響を見上げた。
ゆるくウェーブしている前髪。しっかりした眉。綺麗な弧を描く目。けれど見たことがないほど心細い表情だった。
「芝塚課長に知られるのは、嫌だった?」
響が尋ねた。
咲の心がチクンと痛む。
「……ちょっとびっくりして、動揺しちゃっただけなの。ごめんなさい」
「芝塚課長のこと、まだ気になってる?」
そう言われて、咲は初めて、響が何に傷ついているのかがわかった。
「ううん。全然」
咲は響の背中に手を回し、優しく抱きしめた。
自分からそんなことをするのは生まれて初めてだったけれど、不思議と照れや恥ずかしさはなかった。
「奥さまが妊娠してるって聞いて、心から祝福したい気持ちになったもの」
響が咲の背中に手を回して抱きしめた。
この感触が心地よい。
「俺は心が読めないから、ちょっとしたことですぐに不安になる」
響の声が頭のてっぺんから響いてきた。
「そんなの、だれでもそうでしょう? だから言葉にして確かめるんだもの」
「……そうだね」
響からほっとしたようなため息が漏れた。
「好き」
咲は小さな声で言った。
「俺も」
響はそう言って、咲の額に心を込めてキスをした。
それからもしばらく、お互いの体に手を回し抱きしめあった。気持ちが通じ合っていることの安堵感。満たされた気持ちを味わった。
咲は響を見上げて、微笑む。
「ハンバーグ食べる?」
響も微笑む。
「食べる」
「じゃあ、作るね。待ってて」
咲はそう言って、夕飯の支度に取り掛かった。
1LDKの部屋。小さなリビングには、二人がけのソファとグリーンのラグ、テレビ。引き戸を開けると続きになる寝室には、シングルベッドが置いてあった。
咲は部屋に入って暖色の電気をつけると、カーテンを閉める。
「どうぞ」
咲が言うと、響は無言で部屋に入ってきた。対面式キッチンの床に買い物袋を置く。ガサッと音がして、ビニールの中から缶詰が落っこちた。
咲はしゃがんで拾おうと手を伸ばしたが、響が先に拾い上げた。
「ありがとう」
咲は、缶詰を受け取りながら、無言を貫く響に言う。
「ねえ」
ぽつんと、響がつぶやいた。
缶詰をキッチンに置きながら、咲は響を見上げた。
ゆるくウェーブしている前髪。しっかりした眉。綺麗な弧を描く目。けれど見たことがないほど心細い表情だった。
「芝塚課長に知られるのは、嫌だった?」
響が尋ねた。
咲の心がチクンと痛む。
「……ちょっとびっくりして、動揺しちゃっただけなの。ごめんなさい」
「芝塚課長のこと、まだ気になってる?」
そう言われて、咲は初めて、響が何に傷ついているのかがわかった。
「ううん。全然」
咲は響の背中に手を回し、優しく抱きしめた。
自分からそんなことをするのは生まれて初めてだったけれど、不思議と照れや恥ずかしさはなかった。
「奥さまが妊娠してるって聞いて、心から祝福したい気持ちになったもの」
響が咲の背中に手を回して抱きしめた。
この感触が心地よい。
「俺は心が読めないから、ちょっとしたことですぐに不安になる」
響の声が頭のてっぺんから響いてきた。
「そんなの、だれでもそうでしょう? だから言葉にして確かめるんだもの」
「……そうだね」
響からほっとしたようなため息が漏れた。
「好き」
咲は小さな声で言った。
「俺も」
響はそう言って、咲の額に心を込めてキスをした。
それからもしばらく、お互いの体に手を回し抱きしめあった。気持ちが通じ合っていることの安堵感。満たされた気持ちを味わった。
咲は響を見上げて、微笑む。
「ハンバーグ食べる?」
響も微笑む。
「食べる」
「じゃあ、作るね。待ってて」
咲はそう言って、夕飯の支度に取り掛かった。