不思議な眼鏡くん

ピリリッと、突然スマホがなって、咲は飛び上がった。

いつのまにか、時間が経っている。時刻は午前一時前。

見ると響からのメール。
『遅いね。いつ頃帰れる?』

心臓がばくばくしてくる。

また着信。
『遅いから、迎えに行こうか?』

咲は慌てた。

もっとちゃんと考えて、納得してからじゃないと、会えない。

《響くんが怖くて》

咲は急いで『まだ会社だけど、今日は遅いからこれから自分の部屋に戻るね』と返事をした。

それから乱暴にスマホをカバンに入れる。
コートを手に取り、小走りで会社を後にした。

通用口から走って外に出て、冬の澄んだ空気を吸い込んだ。

どうかしてる、わたし。
怖いことなんて、あるわけないのに。
何か単純なことを見落としているだけで。
本当は、なんでもないことのはず。

ちゃんと考えれば、きっと。

咲は逃げるように、夜のビル街を後にした。

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