不思議な眼鏡くん
突然、身体中を変な感覚が駆け回る。
咲の中心が熱くて、いてもたってもいられない。

響は椅子から降りると、床に膝をつく。咲の手を握りながらも、そっと指先をなでた。

響が咲を見上げる。メガネの奥の瞳が、咲を捕らえる。

響は腕を強く引っ張り、もう片方の手を咲の首に回した。髪をかき分け、その指が咲の首を撫でる。

咲は変な声が出そうになるのを、唇を噛んで我慢した。

響の顔が近づく。
咲の唇に暖かな呼気がかかる。

「今度は、どこに俺の跡をつける?」

あの瞳が、すぐ近くで咲の瞳を見つめる。瞳の黒がまるで濃密な夜のようで。
動悸でのぼせ上がりそうだ。

「耳の後ろは髪をアップにすると他の人に見えちゃうから、今度はそうだな」

咲の首筋を通り、白いブラウスの一番上のボタンで唇が止まる。

「このボタンの下とか?」

ああ、まずい。このままじゃ……。

「待って!」
咲は叫んだ。

「待って、田中くん。ダメだから」

響が顔を上げる。真っ赤な咲の顔を見つめた。

「本心?」
「ダメ。昨日はわたしがどうかしてたの」
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