不思議な眼鏡くん
「鈴木?」
芝塚課長に呼ばれて、はっと我にかえる。

「あ、すみません」
咲は慌てて頭を下げた。

芝塚課長がうつむいた咲の顔を覗き込むように見る。

「最近、なんかあった?」
「いえ」
「そうか、なんだろうな、雰囲気が変わった気がして。気のせいならいいんだ」

隠そうとしても、本当はいろいろばれているのだろうか。
目で響を、つい追ってしまうことも。

「そうそう。田中が」

突然、響の名前が出てきて、咲はビクッと飛び上がる。

「営業成績が、ここ二週間ぐらい、ぐんとあがっただろう。このままだと鈴木を抜きそうだ」

咲も、そのことには気づいていた。
二週間前といえば、ちょうど咲が響との間に線を引いたぐらいのとき。

「あいつ、変わった様子は?」
「……いえ、特に」
「そうか」
芝塚課長が腕を組み、背もたれに持たれる。

「本当に不思議なやつだ」
芝塚課長が微笑む。

「でもそんなあいつを営業として一人前にしてるのは、鈴木の功績だと思うよ。本当によくやってるな」
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