不思議な眼鏡くん
「すみません」
ふと、後ろから小さな声で話しかけられた。
振り返ると、響と同期で一課にいる女の子だ。
「どうしたの?」
「あの子、もうずっと捕まっちゃってて」
女の子の指差す方を見ると、坂上部長がしきりに、隣に座る新人の女の子に絡んでいる。
ビールで顔は真っ赤。浴衣の前ははだけて、今にも下着が見えそうだ。
「さっきから、エロトークばっかりで、かわいそうなんです。でもわたしじゃ彼女を助けられなくて」
女の子が頭をさげる。
「お願いします」
芝塚課長が「ああ、俺、いくよ」と腰を浮かせる。
「坂上部長が、鈴木を呼んでこいって、おっしゃってるんです」
とにかく坂上部長は、酔うと女の子を離さない。そして大変困ったことに、なぜか咲はいたく気に入られていた。
「わたし、いくよ」
咲はビールの瓶を持って、立ち上がった。
「大丈夫か? 俺がなんとかするぞ」
芝塚課長が言う。
樹も心配そうな目を向けてくる。
「大丈夫です。ちょっと部長とおしゃべりしてきますね」
咲はそう言うと、坂上部長のところへ赴いた。