島…君をレンタルしたいカナ
チラ、チラ…とガラスの向こうを垣間見ながら素通り。

これで何度目?
出勤する度に前を通ってるから、かれこれ七回以上にはなるだろう。

どうして選りに選ってこの場所に建ってるんだろうか。私の通勤圏内に店を構えてなくてもいいのに。


勤め先の本屋は、繁華街から外れた通りの真ん中にある。
駅からの通勤途中にあるこのペットショップは、つい先月オープンした。


それまでは、何の関心もなく前を通り過ぎてた。
美容室だった所が、ペットショップになったんだなぁくらいのもんでしかなかった。

この店にどんな動物がいるかとか、そんなのも全く気にしないでいた。だけど、あの日以来、無関心には通り過ぎれなくなった。

中にいるオウムのことも、あの店員のことも忘れられずにいて。


もしもまた会ったら、あの時は失礼しました…と言って謝ろう。
泣き崩れた自分の顔を見せたくなくて、ダッシュして逃げたんです…と弁解しておこう。



(そう思うけど、あの人はもう忘れてるよね)


黒縁のメガネを掛けた男性店員。
名前は一体何と言うのだろうーー。


勇気を出せずに日は過ぎていき、彼を再び見かけたのは、マコト君と別れてから二十日くらいが経った頃だ。


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