島…君をレンタルしたいカナ
話しながら給水ボトルや餌皿の用意をしてる。

私はその様子を呆気に取られた状態で見て、なんだ…と少し呆れるような気持ちも抱いてた。

涙はもう溢れてなかったけど、意識はまだぼうっとしてる。



「……大丈夫?」


ケージの方を向いてた彼が振り返り、私のことを視界に収める。私はその顔を見て頷いたけど、やっぱり意識はまだぼうっとしたまま。

何も考えることができない状態だった。
命が危ないと思ってたのに、単純に冬眠だと言われてホッとし過ぎて。


「それにしても、君の家は余程寒い状態だったのかな。暖房器具は点けてた?」


そう聞かれ、自分の部屋の中を思い出した。
「え…と」と声に出したものの、その声も何だか夢見心地。

思いが口をついて出てこない。
気が抜けたからなのか、話したくても話せなかった。


顔を見たまま押し黙った私を見つめ、彼の方も聞くのを止めた。
寒かったろうね…と囁き、同じ部屋にある水道で手を洗った。


「時間まだある?何かあったかい物でも飲んで帰れば?」


そう言うと、カーテンで仕切られた奥の部屋へ入って行く。
私は身動き一つせず、彼が戻ってくるのを待った。


部屋の中では鳥の鳴き声やカサカサとハムスターが動き回る物音がしてる。

その音も何処か違う世界から漂ってくるようで、なかなか現実として実感が湧いてこなかった。


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