島…君をレンタルしたいカナ
「お待たせ」


そう言って彼が白いカップを二つ手に持ち戻ってきた。

二つのうちの一つを私の目の前に差し出し、「はい」と湯気の立つ飲み物を見せる。


ふわっと揺れた湯気の中に甘い香りの漂う物が入ってた。
カップを手に取ると彼の口角が上がり、「カフェラテ」と教えられた。



「飲める?」


そう聞かれ、コクンと首を縦に振る。
「良かった」と微笑む彼のスマイルが優しそうで、何だか胸が熱くなった。


止まってた涙が溢れてきて、私の視界はまた歪んだ。

チョロが冬眠で良かった…という思いと、タクシー運転手や島店長さんの優しさが身に染みてきて、心の奥底から安心感が湧いた。


声も出さずに泣き出したから、それに気づいた店長さんが慌てる。


「どうかした?」


近付いてきて、私の顔を覗き込む。
普段なら「きゃー♡」と思うところだけど、今はそんな心境じゃない。


「……すみません。私……まともに面倒見れなくて…」


「難しいよ」と言われたのに平気だと軽く思った。

ペットなんて飼ったこともない初心者だったのに、難易度の高いシマリスに手を出してしまった。


野生動物の本能や生活も何も調べず、単純にペットとしてしか考えてなかった。


室温の管理もしないで、自分だけが寒い夜も毛布や布団に包まって寝て、朝の冷え込みにも何もしないでいたんだ。


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