星降る空で抱きしめて【上】~女子校英語教師と生徒の恋の場合
にもかかわらず

君は…



君は彼の腕の中にいて…



出来ることなら彼から君を奪い去りたかった。



でも堂々と君を『彼女』と呼べる彼に対して、俺はたった一言の気持ちさえ口に出来ないただの『教師』で…



あの時、適当な理由を付けて君を彼から引き離すことは出来ただろう。



けれど結局俺に出来たことは…



『俺明日使うプリント、コピーしてかなきゃならなかったから、先帰って。

じゃ、また明日。』



精一杯の強がり。



焦がれる身、とか、引き裂かれる胸、とかきっとこういうことを言うんだろう。

どうしようもなく胸が苦しく、広大な宇宙に突如放り出された小動物のように喘ぎ、もがくしか出来ない。



職員玄関を抜け、誰もいなくなった黄昏のグラウンド脇の欅の大樹の影に辿り着き、俺は我が身を抱える。



(南条、君が…好きだ…)



言葉に出来ない言葉が胸を渦巻く。

溢れる想いをただ君に伝えたいだけなのに、それはこんなにも苦しく、こんなにも険しい、と改めて想い知らされる。
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