キミノテノヒラノウエ。
翌日仕事に出かけ、

風間さんのコンクールで優勝したお菓子を20個買いたいとマネージャーに言うと、
不思議な顔でうなずかれたけど、
昼休みに風間さんの部屋に呼び出された。

「昨日、勤務交代してたよね。」とマネージャーの城田さんが腕組みし、
風間さんがデスクに座って、眉間にしわを寄せる。

結構怖い。

「あ、あの。一緒にルームシェアしている人が盲腸の手術で入院して…
えっと、お見舞いに風間さんのケーキを持って行ったらいいかなって」

「結構な数だけど…」

「あ、あの一緒に住んでる人が医師をしていて、その病院に入院しているので、
お世話になるって思って…美味しいものって風間さんのケーキがいいかなって…」

とシドロモドロになって言うと、

「恋人、入院してるんだ。」と城田さんがいい、

「そう。じゃあ、今日から彼氏が退院するまで15時に早退して。
盲腸の手術なら、何日でもないだろ。
焼き菓子も持っていくといい。
ケーキはその日にしか食べられないから…」と風間さんは言って、城田さんの顔を見る。


「え?でも早退なんて…」と言うと、

「1年目はいなくても困らない。
まあ、彼氏が退院したら、ちゃんと仕事して。」と風間さんは言い、

「ちゃんとパンフレットもたくさん持って行って一緒に渡せ。
しばらく営業ってことにしてやる。」と城田さんも笑って、私を部屋から連れ出した。


城田さんは
「あいつは母親が病気だった時、長い間看病してた。
病院と仕事の両立って大変だって知ってるんだよ。
今回は甘えなさい。」と私に笑いかける。

確かに、仕事の後に病院に行くのは大変だけど…

私が迷った顔をすると、

「特別休暇半日づつ、つけておく。」とクルリと後ろを向いて、いなくなってしまった。


…すごく優しい。

私は上司に恵まれているみたいだ。



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