嘘つきな婚約者


美容室の仕事が終わり、私に特別な仕事が舞い込んできた。

俳優の黒田武瑠(たける)のマンションのリフォームで、内装を担当する。

前に担当した画廊に、黒田武瑠が訪れ、その雰囲気が気にいってくれたそうで、名指しで依頼されたのだ。

初めての打ち合わせ。

どこから見ても完璧な男性だった。

身長は、良さん位だから180センチ、長めの軽くウェーブのかかった髪型、長い手足、抜群のスタイル、そして切れ長の色気たっぷりの目。

この目で、見つめられると、女性はしばらくうっとりしてしまうと言うのが、世間の評判だ。

今日は、プライベートだから、少し変装していて、茶色の眼鏡をかけ、濃紺のラフなジャケットに中は白いTシャツ、黒のジーンズだ。

「初めまして。やっとあなたに会えました。」

と、すっと右手を出して握手を求めてくる。そのしぐさがとてもスマートだ。

「よろしくお願いいたします。」

握手に答えながら、挨拶をした。

「あの画廊を見て、どんな人がデザインしたのか、ずっと気になっていたんですよ。やはり、想像通りの方だったな。」

< 52 / 78 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop