イケメンなんか大嫌い

頭に鳴り響く耳障りなアラーム音に、意識を取り戻した。

「う……ん」

枕に顔を埋めたまま、唸りながら宙に指先を彷徨わせるが、枕元にあるはずのスマートフォンが見つからない。
少し冴えて来た頭で、よくよく耳を澄ましてみると、もっと遠くで鳴っているように聞こえた。

「あれ……?」

のそのそと上体を起こし、カーテンの隙間から朝の光を感じつつ目を擦っていると、隣ですやすやと眠っている男が視界に映り込み愕然とした。

……俊弥っ!?

裸っ!!

口をあんぐりと開いたままで、きょろきょろと辺りを見回した後、意味もなく今さら身体を布団で隠してみる。
……夢じゃなかった……。
突き付けられた現実に、がっくりと首部を垂れて頭頂部を掻き毟る。

うわぁぁ~~どうしよう。

そうこうしている間にアラームは止まったようで、窓から鳥の鳴き声が耳に届いた。

だらだらと冷や汗を垂らし顔を引き攣らせつつも、くっそ綺麗な寝顔だなと、論点のずれた感想を脳内に浮かべていると、その瞼が薄く開いた。

「…………」

自分の腕時計の時刻を確認したらしく、飛び起きる。

「やっべ遅刻する」

やや身体を引き気味のわたしと顔を見合わせると、少し逡巡するような仕草を見せた後、腕が伸びて来た。
何事かと目を瞑り身体を強ばらせると、頭に掌の感触。

「また連絡する」

優しく撫でた後、素早く服を身に付け、風のように扉の外に姿を消した。

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