イケメンなんか大嫌い

青りんごサワーのジョッキを両手で抱え視線を落としていると、「食べないと冷めるよ」と前方から突っ込みが入った。
返す言葉もなく、しばらくもくもくと食事に専念していると、梨花が口を開いた。

「……未麻は結局、賢司くんに本心を伝えるっていう力を使わずに別れたわけよね」
「……まぁ、そうなるね……タイミング悪く俊弥が乗り込んで来たから」

「……何ていうか、未麻が背負わないといけなかったエネルギーを、俊弥くんが引き受けた感じすら受ける。そこまで考えてるか知らないけど、結果的に?」

右手の箸を顔の横で動かしながら、わたしを見る。

「……えぇ……そんなわけ……」
「……情熱的だよね。消えろだの、死ねだの、結構な仕打ち食らってんのに、よく諦めずに居てくれるなって思った」

「……死ねとは言ってない……。というかそれは……っそもそも俊弥が突っ掛って来るから……!」

わたしが悪いのか? と反論を試みたが、すかさず一蹴された。

「……じゃあ、そんなに嫌いなら、どうして寝たの?」

梨花の鋭い眼差しに耐え切れず、手に持っていた取り皿をテーブルに置いて、しばし視線を泳がせた。
俊弥の顔が頭に浮かんで消える。
好きだから……って、それだけで一緒に居られるのかな。

「……前に梨花が言ってたこと、本当だったんだと思った」
「え?」

「“イケメン怖い”って。怖いから、躊躇ってるんだと思う。あんな未知の生物と付き合うなんてさぁ……振り回されて、疲れ果てそうで」

苦笑いを浮かべると、彼女は黙ってわたしを見つめていた。

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