イケメンなんか大嫌い

「しかし略奪とは、やるねぇ~男版小悪魔って感じ? 気に入ったわ~今度会わせてよ」

顎に手を沿え、にやにやと視線を送って来る梨花。

「楽しまないで! ……っていうか、会わせるって。わたし達、付き合ってるわけじゃ」
「もう付き合ってる流れなんじゃないのー?」

彼女は抗議でも申し立てるように眉間に皺を寄せて唇を尖らせると、生ビールのジョッキを煽った。

「うぐっ。それマズくない……? 別れたその日からって……。大体1回やったからって別に……責任取れとも言わないし。処女じゃあるまいし……」

冷や汗を流しつつ、しどろもどろで言い訳を絞り出すと、竹を割ったような返答が刺さる。

「そういうこともあるんじゃないの? 両想いなんだったら、良いじゃない別に。……私は、このまま賢司くんと付き合ってる方が、まずかったと思うけどね」

瞼を伏せ零した、梨花の台詞に目を見張った。

「お待たせ致しました~鉄板熱くなっておりますので、お気を付け下さい~」

店員が運んで来た、とん平焼きの焼ける音が狭い空間に響く。

「気持ちがないのに付き合い続けるなんて失礼だし、長引かなくて良かったよ。賢司くんと一生一緒に居るのは現実的じゃなかっただろうし」
「……それにしたって、もう少し別れ方が……」

梨花が耳に髪を掛けながら、鉄板に箸を入れ口に運ぶ様を眺めていた。

「綺麗に別れるなんて、あんまり意味ないことじゃない? 今後の人生に関係ないし、下手に想い出が美化されなくて良かったんじゃない。男の人って引き摺るから」

「そう……なのかな……」

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