イケメンなんか大嫌い

隣ですやすやと寝息を立てている、無防備な寝顔を眺めた。
秋も深まって来たこの頃、裸に布団1枚では寒い。賢司くんにそっと身を寄せた。
温かい肌。じんわりと心にも温かさが広がるようだ。

『付き合わねーし。未麻みたいな可愛くない奴』

何故だか俊弥の声が頭に響いた。
あの頃の、まだ幼い俊弥の声。

久しぶりに思い出した。
心の奥に厳重に仕舞い込んだつもりでいたけれど。

わたしは、素直になれなくて、言葉ではっきり言えないから、態度で下手なアピールをするような女子だった。

相手の態度は、自分の態度によって変わるのだ。
男に軽んじられないような態度を取れば良いんだ。

何度かの失恋ののち、敗因を悟ったわたしは、大学入学と共にデビューをして、方向性を変えた。

素の自分は封印して、女らしい振る舞いを心掛けた。

自分に“大切にされる女”の暗示をかけていたら、周囲の男子が変わって行ったから、わたしは今幸せだし、これで良いと思っている。

心に薄らと漂う違和感を、大ごとにしない──

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