愛され系男子のあざとい誘惑
ど、どうしよう。藤澤さん、本当に寝息を立てて寝てしまった。確かに掃除はもう終わってる。藤澤さんと少しでも話したいから。とはいえ膝枕なんてどうしたらいいの?


でも、こんな一瞬で寝てしまうくらい疲れているってことなんだろうな。本当に仕事熱心。きっとこの職場でもみんなから慕われて頼りにされていそう。


無意識に彼の髪をそっと撫でた。柔らかくてずっと撫でていたい。


「いつも、おつかれさまです」


こんなところにもし誰か入って来たらと不安がないわけじゃなかったけれど、二人っきり、しかも好きな人を膝まくらするなんて滅多にないからとなるべく動かないようにした。


彼女とかいるのかな。いるよね。でも、それなら他の女の子にこんなこと頼むなんて悪い人。ちょっとムッとして頬をムニッと抓った。「んー」と声を上げる彼。

本当にそうだったらズルイ人。きっと自分をうまく使う方法を知ってるんだろうな。こんなことされたら誰だって好きになっちゃう。


眠る彼の顔をジッと見ながら、ずっと独り占めできたらいいのになんて無謀な思いを抱いた。


「藤澤さん、そろそろ10分経ちましたよ」


足ももう限界。10分も動かさなければプルプルしてくるし、痺れてきた。それでも10分と約束したんだからきっちり10分は我慢した。


でも、もう無理。トントンと肩を叩いて彼を起こす。でも藤澤さんは全く起きる気配がない。
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