愛され系男子のあざとい誘惑
この人は分かっている。自分の魅せ方を。こんな風に言って私が悲しい表情を浮かべることも分かって言っている。


悔しい。その通りにしか動けない、自分が。



「そんな顔しないで。このネクタイ、ワンタッチネクタイって最初から結んであるんだ。俺、結べないって言ったでしょ?」



また、やられたとふくれっ面でいると頬をツンツンと藤澤さんに突かれた。「ごめんね」なんて完全なる確信犯のくせに。



でも「行こうか」と慣れた仕草でエスコートされて、すっかり私はお姫様になった気分だった。
< 24 / 77 >

この作品をシェア

pagetop